AIエージェントPoCの費用相場|国内9社の価格・期間・発注範囲を匿名比較
AIエージェントのPoCを外部へ依頼するとき、金額だけを比べると判断を誤ります。同じ「PoC」でも、限定データを使ったデモと、社内システム連携、権限管理、実ユーザー検証まで含む案件では、購入している成果物が異なるためです。本記事では、2026年9月1日時点で確認できた国内9社の公式公開情報をもとに、会社名と固有サービス名を匿名化したうえで、費用、期間、発注範囲、本番化の判断基準を整理します。

結論:業務PoCの中心は150万〜500万円、1〜3カ月
複数社の公開価格を重ねると、国内のAIエージェントPoCは大きく3段階に分かれます。50万円前後から始められるサービスもありますが、安価なプランは、1業務、1シナリオ、既存基盤、限定データを使ったデモや適用診断が中心です。
RAG、外部API、評価データ、ユーザーテストまで含め、本番へ進むかを判断できる業務PoCの中心は150万〜500万円です。CRM、ERP、社内DBへの接続、複数部門、権限管理、監査ログ、人による承認まで対象にすると、500万円を超える場合があります。
| レベル | 予算目安 | 期間目安 | 代表的な範囲 |
|---|---|---|---|
| 簡易検証 | 50万〜150万円 | 2〜6週間 | 1業務、1エージェント、限定データ、簡易UI、デモ、一次評価 |
| 業務PoC | 150万〜500万円 | 1〜3カ月 | RAG、1〜2業務、API接続、評価セット、ログ、ユーザーテスト、ROI評価 |
| 本番類似PoC | 500万円以上 | 2〜6カ月 | 複数システム、権限・監査、人的承認、複数エージェント、運用設計 |
国内9社の公開条件を匿名で比較
以下はランキングではありません。公開されているサービス範囲と料金モデルが異なるため、単純な価格順ではなく、成果物、連携範囲、PoC後の所有・運用方法を比べる必要があります。価格非公表の会社については推測していません。
| 会社・類型 | 期間 | 公開価格 | 提供範囲・確認点 |
|---|---|---|---|
| A社/マネージド基盤型 | 標準1カ月、最短2週間 | 開発50万円〜、月額2万円〜、モデル利用料別 | 専用基盤上で開発・運用。保守負担は小さいが、コード引継ぎ条件を確認 |
| B社/AI開発ブティック | 2〜3週間、1〜2カ月、2〜4カ月の3段階 | 50万円〜、150万円〜、300万円〜 | シナリオ数、評価レポート、ソース、IaC、技術移転資料の範囲がプランで異なる |
| C社/AIコンサル・開発 | 個別見積 | PoC 100万〜300万円、標準300万〜500万円、本格500万円〜 | 業務分析、ROI、本番ロードマップを含む。運用は月20万〜50万円 |
| D社/専門家伴走型 | サービス固有期間は非公表 | 月額250万円〜 | 専門家チームの月額伴走。期間総額と社内側の稼働を確認 |
| E社/受託開発型 | 2〜12カ月、平均3〜4カ月 | 開発全体200万〜2,000万円、最多400万〜800万円 | PoC単独価格ではない。RAG、連携、アプリ、インフラ、運用まで対象 |
| F社/共同開発・内製化型 | 準備約2週間、集中開発後に検証 | 非公表。案件により無償枠あり | 顧客側の技術・業務担当者も参加。内製化とテーマ準備が前提 |
| G社/クラウドSI型 | 短期間と記載、標準期間は非公表 | 非公表 | クラウド上のRAG、文書検索、エージェント。セキュリティと運用支援を含む |
| H社/大手SI・コンサル型 | 非公表 | 非公表 | ユースケース選定からデータ保護、アクセス管理、ガバナンスまで一気通貫 |
| I社/業務・クラウドSI型 | 非公表 | 非公表 | 業務再設計、ROI、人的承認、運用監視まで本番を意識して支援 |
価格を左右するのは、LLM利用料より業務・連携・評価
小規模PoCではLLM APIやクラウドの利用料が開発費より小さく収まるケースが多く、費用の中心は人の作業です。モデル利用料が下がっても、業務分析、データ加工、エージェント設計、システム連携、評価、セキュリティ、プロジェクト管理の工数はなくなりません。
見積書では「エンジニア何人月」だけでなく、業務設計、データ、エージェント・RAG、連携、評価、セキュリティ、進行管理、本番移行成果物へ分解して確認すると、会社間の違いを比較しやすくなります。
| コスト要因 | 影響 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 既存システムとの連携数 | 非常に大きい | 接続先ごとに認証、例外処理、テストが増える |
| データの状態と権限 | 非常に大きい | 紙、重複、表記ゆれ、更新ルール・権限の不整合は事前整備が必要 |
| エージェント・シナリオ数 | 大きい | 対象業務と分岐が増えるほど設計、評価、改修が増える |
| AIが読むだけか実行するか | 大きい | 登録、更新、送信を許可すると誤動作時のリスクとテスト量が増える |
| 品質保証とログ | 大きい | 精度、根拠性、再現評価、失敗パターン、監査の要求水準で変わる |
| セキュリティ | 大きい | 認証、個人情報、アクセス制御、閉域、監査への対応が必要 |
| コード・資料の引継ぎ | 中〜大 | デモ納品か、ソース、IaC、評価手順、運用資料まで残すかで変わる |
| LLM・クラウド利用量 | 小〜中 | 従量費は必要だが、小規模PoCでは人件費より小さいことが多い |
初回発注は200万〜400万円、1業務から始める
公開価格をもとに当社が初回発注の基準として提案するのは、200万〜400万円、6〜10週間、1業務、1〜2シナリオです。市場の中心価格帯である150万〜500万円の中央付近にあたり、単純なデモより十分な評価ができ、最初から大規模統合へ進むリスクも抑えられます。これは公的統計の平均値ではなく、複数社の公開条件から導いた予算計画上の目安です。
500万円以上をかけること自体が問題なのではありません。問題は、データ、権限、例外処理、自動実行のリスクが分からない段階で、広い業務を対象にすることです。初回は1業務・1機能へ絞り、効果を確認できた範囲から本番化します。
6〜10週間で本番判断まで進める標準フロー
業務PoCでは、完成してから評価方法を考えるのでは遅すぎます。開始時点でGo、Pivot、No-Goの条件、テストデータ、許容できる誤り、人の承認が必要な処理を決めます。
| 時期 | 工程 | 完了条件 |
|---|---|---|
| Week 0〜1 | 業務課題・KPI定義 | 対象業務、現行工数、KPI、対象外、継続・中止条件を定義 |
| Week 1〜2 | データ・権限確認 | データ一覧、個人情報、接続先、評価用データ、AIに許可する処理を確定 |
| Week 2〜3 | 最小プロトタイプ | AIを使わない方法や単純処理と比較できる最小構成を作成 |
| Week 3〜6 | エージェント構築 | RAG、ツール連携、人的承認、ログ、評価機構を実装 |
| Week 6〜8 | 実ユーザー検証 | 実業務に近い成功例・失敗例を業務担当者が記録 |
| Week 8〜9 | 事業性・運用評価 | 時間削減額、品質、1タスク当たりコスト、運用費、リスクを算出 |
| Week 9〜10 | 投資判断 | 本番化、条件変更、再検証、中止のいずれかを数字で決定 |
成功は「回答精度」だけで判断しない
AIエージェントで重要なのは、正しい文章を生成できることより、業務を安全に完了できることです。回答精度が高くても、人が毎回全面修正する、外部システムへの更新に失敗する、例外時に停止できない状態なら、事業上の成功とはいえません。
「コスト10%削減」「処理時間20%短縮」などはKPIの例であり、一般的な達成保証ではありません。対象業務の現状値を測り、開始前に比較条件を固定します。
| 評価軸 | KPIの例 |
|---|---|
| Business | 処理時間削減率、人時削減、処理件数、売上・成約率への寄与 |
| Quality | タスク完了率、正答率、根拠性、必要情報の抜け率 |
| Risk | 重大エラー率、ハルシネーション率、誤実行率、人への引継ぎ率 |
| Economics | 1タスク当たりAIコスト、削減人件費、月次TCO、投資回収期間 |
| Adoption・運用性 | 利用率、手動介入率、ユーザー評価、障害時の復旧可能性 |
ベンダーは「PoC後に誰が持つか」で選ぶ
短期間で成立性だけを確認するなら、専用基盤を使うマネージド型が向きます。PoC後に自社や別の開発会社で本番化するなら、ソースコード、IaC、評価手順、再現ログが納品されるかを確認する必要があります。
仮説が固まっておらず、社内担当者も技術検証へ参加できる場合は、伴走型や共同開発型が適しています。基幹システム、複数部門、厳格な権限・監査を含む場合は、PoC価格の安さより、本番アーキテクチャとガバナンスまで一貫して設計できるかを優先します。PoC後に全面的な作り直しが発生すると、初期費用を抑えても総額は高くなります。
RFPと見積依頼に入れる10項目
「AIエージェントを作りたい」だけでは、各社が異なる前提で見積もるため比較できません。次の項目をそろえると、金額だけでなく成果物と本番化条件を比較できます。
見積依頼前のチェックリスト
- 対象業務と現在の作業時間・コスト
- 検証する1〜2個のシナリオ
- 利用する文書、DB、履歴などのデータ
- 接続するSaaS、API、DB、基幹システム
- AIに許可する処理と、人の承認が必要な処理
- KPIとGo、Pivot、No-Goの基準
- 個人情報、権限、ログ、保存、閉域などのセキュリティ要件
- ソースコード、IaC、評価データ、運用資料を成果物に含めるか
- 本番運用時の月額費用と概算TCO
- PoC後の本番化範囲、期間、概算見積もり
まとめ:安いデモではなく、本番判断を買う
AIエージェントPoCは50万円から始められますが、業務で使えるかを判断するための中心価格帯は150万〜500万円です。本番に近いシステム連携やガバナンスまで含めれば500万円以上、複数連携では1,000万円を超えても不自然ではありません。
最も重要なのは、PoC終了時に評価データ、KPI結果、失敗パターン、想定TCO、セキュリティ課題、運用責任、本番ロードマップが残ることです。「AIが動いた」というデモではなく、「10週間後にGo、Pivot、No-Goを数字で決められるPoC」を発注することが、作り直しを防ぐ現実的な選択です。
調査方法と価格情報の注意点
本記事は、2026年9月1日時点で国内のAIスタートアップ、専門開発会社、SIerなど9社が公式に公開していた価格、期間、成果物と、複数の国内事業者が公開する相場情報を比較したものです。比較対象企業はA社〜I社とし、会社名、固有サービス名、顧客名は掲載していません。
記載した相場は公的な統計調査の平均値ではありません。開始価格、月額契約、プロジェクト総額、PoC単独ではない開発価格が混在し、消費税、LLM・クラウド利用料、データ整備、出張などの扱いも各社で異なります。500万〜1,500万円超の本番類似PoC予算と、200万〜400万円・6〜10週間の初回発注目安は、複数の公開条件から当社が導いた計画値であり、特定会社の標準価格、当社の固定価格、納期・成果の保証ではありません。発注時は最新の公式条件と個別見積もりを確認してください。
